社員旅行は経費にできる?否認されないための条件まとめ

「社員旅行の費用は経費にできるのか?」と疑問に思う経営者や経理担当者は多いのではないでしょうか。

社員旅行は条件を満たせば福利厚生費として経費計上できますが、要件を外れると給与扱いとなるケースもあります。

この記事では、社員旅行を経費にできる条件・経費にならないケース・勘定科目・税務調査での注意点を解説します。社員旅行の経費処理の参考にしてみてください。

社員旅行の経費は福利厚生費が基本

社員旅行の費用は、一定の条件を満たせば「福利厚生費」として経費計上できます。

ただし内容次第では「給与」として課税される場合もあり、判定の基準は国税庁が示しています。

まずは社員旅行の経費に関する基本的な考え方を整理します。

国税庁の取扱い

社員旅行の経費の取扱いは、国税庁の「タックスアンサーNo.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」に示されています。

国税庁は次のように説明しています。

社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行と認められるもので、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものであると認められるものについては、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよい引用:国税庁|No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

つまり、「世間一般で行われている範囲の社員旅行」で、「会社の負担額が社会通念上少額と言える程度」であれば、給与として課税せず福利厚生費にできる、という考え方です。

福利厚生費として計上できるかどうかは、この国税庁の考え方に沿っているかで判断します。

経費か給与かの判定方法

経費か給与かの判定は、旅行内容を総合的に勘案して行われます。

「総合的に勘案」とは、特定の数値要件だけで機械的に判定するのではなく、旅行の実態を多角的に見て判断するという意味です。

国税庁は判定にあたって下記の要素を挙げています。

  • 旅行の企画立案
  • 主催者
  • 旅行の目的・規模・行程
  • 従業員等の参加割合
  • 使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合

これらの要素を一つひとつ確認し、全体として「社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行」と認められるかどうかが判断基準となります。

具体的に満たすべき要件は次の章で詳しく解説します。

社員旅行を経費にできる条件

社員旅行を福利厚生費として経費計上するには、国税庁が示す要件を満たすことが原則です。

要件は下記の3つです。

  • 旅行期間が4泊5日以内
  • 参加人数が全体の50%以上
  • 社会通念上少額の範囲内

なお、最終的には旅行内容を総合勘案して判定されるため、要件を満たすだけでなく実態も問われます。

それぞれの要件を詳しく見ていきましょう。

旅行期間が4泊5日以内

社員旅行を経費にするには、旅行期間が4泊5日以内である必要があります。国税庁の通達では下記のとおり示されています。

旅行の期間が4泊5日以内であること。海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。引用:国税庁|No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

国内旅行は旅行全体の期間、海外旅行は現地滞在日数が基準です。5泊6日以上になると福利厚生費としての経費計上は認められず、給与として課税されます。

参加人数が全体の50%以上

全従業員の50%以上が参加していることが要件です。国税庁の通達では下記のとおり示されています。

旅行に参加した人数が全体の人数の50パーセント以上であること。工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要です。引用:国税庁|No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

工場や支店ごとに旅行を行う場合は、職場単位で50%以上の参加率が求められます。「全従業員」にはパート・アルバイトなどの非正規雇用も含まれるのが一般的な解釈です。

事前に参加者名簿を作成し、人数を確認しておきましょう。

社会通念上少額の範囲内

会社が負担する金額は「社会通念上少額」と認められる範囲内である必要があります。国税庁は具体的な上限額を明示しておらず、通達では下記の3事例が示されているのみです。

事例期間旅行費用うち会社負担参加割合経費の可否
事例13泊4日15万円7万円100%福利厚生費として経費OK
事例24泊5日25万円10万円100%福利厚生費として経費OK
事例35泊6日30万円15万円50%給与課税(経費にならない)

明確な金額基準はなく、期間・参加率・金額・実態の総合勘案で判定されます。実務上は事例1・2の会社負担額(一人あたり7万円〜10万円)がひとつの目安です。

なお、自己負担を必須とするルールはなく全額会社負担も可能です。ただし国税不服審判所の裁決事例(平22.12.17)では、2泊3日の海外旅行で一人あたり241,300円を全額会社負担としたケースが「社会通念上一般的に行われている範囲内のレクリエーション行事とは認められない」と判定された例があります。

出典:国税不服審判所|(平22.12.17裁決)

社員旅行が経費にならないケース

社員旅行が要件を満たしていても、旅行の実態によっては福利厚生費として認められないケースがあります。これらに該当する場合は、給与・交際費など別の勘定科目で処理する必要があります。

国税庁の通達では、下記のような旅行はレクリエーション旅行に該当しないと明示されています。

役員だけで行う旅行取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行実質的に私的旅行と認められる旅行金銭との選択が可能な旅行引用:国税庁|No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

これらに加えて、不参加者へ金銭を支給した場合も注意が必要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

役員だけで行う旅行

役員だけで行う旅行は、福利厚生費として経費計上できません。福利厚生は全従業員を対象とする制度であり、特定の層だけが対象では福利厚生の趣旨から外れるためです。

役員のみの旅行費用は、原則として給与として課税されます。役員も従業員も参加する旅行であれば問題ありませんが、役員だけの旅行は別の勘定科目で処理する必要があります。

取引先への接待目的の旅行

取引先を接待する目的で行う旅行は、福利厚生費にはなりません。福利厚生はあくまで自社の従業員のための制度だからです。

このような旅行費用は、福利厚生費ではなく「交際費」として処理する必要があります。社員旅行に取引先が同行する場合も、取引先分の費用は福利厚生費に含められません。

実質的に私的な旅行

形式的には社員旅行として実施されていても、実質が私的旅行と判断されるものは経費計上できません。例えば、特定の社員の家族行事に他の社員が同行する形などが該当します。

判定は旅行の目的・参加者の構成・行程などを踏まえて行われます。社員旅行として実施するには、業務上のレクリエーションとしての実態を持たせる必要があります。

金銭との選択が可能な旅行

「旅行に参加する」「金銭を受け取る」のどちらかを社員が選べる形式の旅行は、福利厚生費として認められません。金銭との選択が可能な場合、旅行の経済的利益は実質的に給与と同じとみなされるためです。

社員旅行は、参加か不参加かの選択のみとし、金銭支給とのトレードオフ設計にしないことが必要です。

不参加者へ金銭を支給した場合

社員旅行に参加しなかった人へ金銭を支給した場合、要件を満たしていても全員の旅行費用が給与として課税されます。国税庁の通達には下記のとおり明示されています。

自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には、参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされます。引用:国税庁|No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

不参加者への金銭支給は、参加者を含めた全員の福利厚生費認定を失わせる結果となります。社員旅行の不参加者には、金銭ではなく別の福利厚生で対応する必要があります。

社員旅行の経費の勘定科目

社員旅行の費用に使う勘定科目は、旅行の内容や目的によって変わります。福利厚生費として処理できるケースが基本ですが、要件を満たさない場合は別の科目で処理する必要があります。

主に使われる勘定科目は下記の4つです。

  • 福利厚生費
  • 交際費
  • 研修費
  • 給与

それぞれどのようなケースで使われるかを解説します。

福利厚生費

要件をすべて満たした社員旅行の費用は、「福利厚生費」として処理します。前述の要件(4泊5日以内・参加50%以上・社会通念上少額)を満たし、国税庁が示す「該当しない旅行」にも当てはまらない場合が対象です。

仕訳例

一人あたり7万円の社員旅行を10名で実施し、合計70万円を会社の普通預金から支払ったケースの仕訳例です。

借方金額貸方金額
福利厚生費700,000円普通預金700,000円

社員に一部自己負担を求める場合は、自己負担分を「預り金」で処理し、後で相殺します。

研修費

業務を行うために直接必要な研修旅行の費用は、「研修費」として処理します。国税庁の通達では、研修旅行について下記のように示されています。

研修旅行が会社の業務を行うために直接必要な場合には、その費用は給与として課税されません。しかし、直接必要でない場合には、研修旅行の費用が給与として課税されます。引用:国税庁|No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

観光がメインの団体旅行や、観光渡航の許可をもらい海外で行う研修旅行などは、原則として業務に直接必要なものとはみなされません。

仕訳例

業務に直接必要な研修旅行を10名で実施し、合計50万円を普通預金から支払ったケースの仕訳例です。

借方金額貸方金額
研修費500,000円普通預金500,000円

交際費

取引先を接待する目的の旅行や、社員旅行に取引先が同行する場合の取引先分の費用は、「交際費」として処理します。福利厚生費は自社の従業員のための制度であり、取引先への支出は対象外となるためです。

仕訳例

社員8名と取引先2名を含む合計10名の旅行を実施し、一人7万円・合計70万円を普通預金から支払ったケースの仕訳例です。社員分は社員旅行の要件(4泊5日以内・参加50%以上・社会通念上少額)を満たすことが前提です。

社員分は福利厚生費、取引先分は交際費に区分します。

借方金額貸方金額
福利厚生費560,000円普通預金700,000円
交際費140,000円

給与

社員旅行の要件を満たさない場合や、不参加者へ金銭を支給した場合は、旅行費用が「給与」として課税されます。給与扱いになると、源泉徴収の対象となるため経理処理が複雑になります。

具体的には、下記のようなケースが該当します。

  • 旅行期間が5泊6日以上
  • 参加率が50%未満
  • 役員だけで行う旅行
  • 金銭との選択が可能な旅行
  • 不参加者へ金銭を支給した場合

仕訳例

要件を満たさない社員旅行を10名で実施し、一人7万円・合計70万円を普通預金から支払ったケースの仕訳例です。源泉所得税については便宜上省略しています。

借方金額貸方金額
給与700,000円普通預金700,000円

給与扱いを避けるためにも、事前に要件を確認しておくことが重要です。

社員旅行を経費にする際の注意点

社員旅行を福利厚生費として確実に経費計上するには、要件を満たすだけでなく、後から要件を満たしていたことを証明できる体制が必要です。税務調査が入った際に「福利厚生として実施した」と説明できる準備をしておきましょう。

実務上、特に押さえておきたい注意点は下記の3つです。

  • 社内規程・旅行規程を整備する
  • 旅行計画書・参加者名簿を作成する
  • 領収書・請求書を保管する

それぞれの注意点を解説します。

社内規程・旅行規程を整備する

社員旅行を福利厚生制度として位置づけるためには、社内規程に明文化しておくことが重要です。規程の有無は、旅行が会社の福利厚生として恒常的に運営されていることを示す根拠になります。

規程に盛り込むべき主な項目は下記のとおりです。

  • 実施目的(社員の慰安・親睦など)
  • 参加対象(全従業員・職場単位など)
  • 実施頻度(年1回・隔年など)
  • 費用負担の考え方(会社負担・自己負担の割合)
  • 不参加者の扱い(金銭支給は行わない旨)

規程があれば、税務調査時にも福利厚生制度として説明しやすくなります。

旅行計画書・参加者名簿を作成する

旅行ごとに、計画書と参加者名簿を作成して保管しておきましょう。これらの書類は、要件を満たしていたことを後から証明する重要な資料です。

計画書には旅行の目的・日程・行程・参加予定者を記載します。参加者名簿には、全従業員数と実際の参加人数・参加率を記録し、参加割合50%以上を満たしていた事実を示せるようにします。

しおりや旅行行程表、現地での写真などもあわせて保管しておくと、業務上のレクリエーションとしての実態を示す資料になります。

領収書・請求書を保管する

旅行代金・宿泊費・交通費など、社員旅行にかかった費用の領収書や請求書は必ず保管します。これらは経費計上の根拠となる証憑書類です。

法人税法上、帳簿書類の保存期間は原則7年間と定められているため、社員旅行の関連書類も同期間の保管が必要です。

旅行代理店を利用した場合は、行程表や請求明細書も合わせて保管しておくと、内訳の確認や税務調査時の説明がスムーズになります。

社員旅行と経費のよくある質問

社員旅行の経費処理について、特に多い質問をまとめました。

海外旅行も経費にできる?

海外旅行も福利厚生費として経費計上できます。

ただし、現地での滞在日数が4泊5日以内であることが必要です。

研修旅行の扱いは?

研修旅行は「業務に直接必要な場合」のみ給与課税されず、研修費として経費計上できます。

観光がメインの団体旅行や、観光渡航許可で行う海外研修旅行は、業務に直接必要なものとはみなされません。

家族同伴の旅費は経費になる?

家族分の旅費は福利厚生費として経費計上できません。

福利厚生制度はあくまで自社の従業員を対象とするものであり、家族分の費用は該当する従業員・役員本人の給与として扱われます。

1人会社でも社員旅行を経費にできる?

1人会社(社長一人の会社)の社員旅行は経費計上できません。

国税庁が「該当しない旅行」として明示している「役員だけで行う旅行」に該当するためです。役員以外の従業員が1名以上在籍し、その従業員も参加する旅行であれば経費計上できる可能性があります。

家族のみが従業員の会社でも経費にできる?

家族のみが従業員の会社では、経費計上できないリスクが高いです。

形式的には従業員が参加していても、社長と家族従業員のみで行く旅行は「実質的に私的旅行」と判定される恐れがあるためです。

お小遣いなど現金支給は経費になる?

旅行に関連した現金支給は、原則として給与課税のリスクが高くなります。

不参加者へのお小遣い支給は、参加者を含めた全員の旅行費用が給与扱いとなる原因となります。参加者への現金支給も給与とみなされる恐れがあるため、現金ではなく旅行費用そのものとして処理するのが安全です。

まとめ|社員旅行は条件を満たせば経費にできる

社員旅行は、国税庁が示す要件を満たせば福利厚生費として経費計上できます。要件を満たさない場合や、役員のみ・実質的に私的な旅行とみなされる場合は給与扱いとなるため注意が必要です。

経費計上のポイントは「事前準備」と「証憑保管」の2つです。社内規程を整備し、旅行計画書・参加者名簿・領収書を残しておくことで、税務調査でも福利厚生としての実態を示せます。

判断に迷うケースや高額な旅行を予定している場合は、税理士など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

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