
出張のたびに「日当はいくら支給すればいいのか」「勘定科目はどれが正しいのか」と悩んでいませんか。
出張手当(日当)は、出張中の食費や通信費などを補填する目的で支給される手当です。正しく運用することで、会社・従業員の双方が税負担を抑えられます。
そこで、この記事では出張手当(日当)の基本的な意味や相場、勘定科目・課税区分、導入方法について解説します。これから制度を導入したい方や、自社の運用を見直したい方はぜひ参考にしてください。
出張手当(日当)とは

出張手当(日当)とは、従業員や役員が出張した際に、会社が支給する手当のことです。「出張日当」「旅費手当」とも呼ばれます。食費や通信費など、出張中に発生する細かい出費を補填する目的で支給されます。
支給金額や対象者などのルールは法律で定められていません。そのため、あらかじめ会社が定めた金額を1日単位で支給するのが一般的です。
出張経費との違い
出張にかかる費用は「出張手当(日当)」と「出張経費」の2つに分けられます。
出張経費とは、交通費や宿泊費など実際にかかった費用のことです。領収書をもとに実費精算されます。一方、出張手当(日当)は、現地での食費や通信費など細かい出費に対して、会社があらかじめ定めた金額を支給するものです。
支給しないことは違法か
出張手当(日当)の支給は、法律上の義務ではありません。労働基準法・労働契約法のいずれにも、支給を義務付ける規定はないため、支給するかどうかは会社の裁量に委ねられています。
ただし、就業規則や出張旅費規程に「支給する」と明記されている場合は注意が必要です。その内容は労働契約の一部とみなされるため(労働契約法第7条)、支給しないと労働契約違反となる恐れがあります。
出張手当(日当)の相場

出張手当(日当)の相場は、役職や出張の種類(国内・海外、日帰り・宿泊)、業種によって異なります。
以下で詳しく解説します。
国内出張の相場(役職別)
国内出張の日当は、役職が上がるほど金額も高くなるのが一般的です。中小企業における目安は下記のとおりです。
| 役職 | 日帰り出張 | 宿泊出張 |
| 一般社員 | 1,000〜3,000円 | 2,000〜3,000円 |
| 部長・管理職 | 2,000〜4,000円 | 2,500〜4,000円 |
| 役員・取締役 | 2,500〜6,000円 | 3,000〜5,000円 |
| 代表取締役・社長 | 3,000〜8,000円 | 4,000〜8,000円 |
※上記はあくまで目安です。企業規模や地域によって異なります。
金額を決める際は、まず支給の判断基準を定める必要があります。財務省の調査では「往復の距離」を基準にする企業が49.4%で最も多く、次いで「宿泊の有無」が44.8%となっています。距離が長いほど身体的・精神的な負担も大きくなるため、距離に応じて金額を段階的に設定する方法が一般的です。
また、役職間で極端な差をつけすぎると、税務上「給与」とみなされ課税対象となるリスクがあります。役員と一般社員の間で合理的なバランスを保つことが重要です。
海外出張の相場(役職別)
海外出張の日当は、国内と比べて高くなる傾向があります。財務省の調査によると、海外出張の日当の平均は5,441円です。地域別ではアジアが5,811円、北米が7,111円と、渡航先によって差があります。
役職別の目安は下記のとおりです。
| 役職 | 日当の目安 |
| 一般社員 | 4,000〜6,000円 |
| 部長・管理職 | 5,000〜8,000円 |
| 役員・取締役 | 6,000〜10,000円 |
| 代表取締役・社長 | 6,000〜20,000円 |
海外出張の日当を決める際は、渡航先の物価水準を考慮することが重要です。同じアジアでも、シンガポールと東南アジア各国では物価が大きく異なります。外務省が公表している「海外渡航旅費の支給に関する基準」や、同業他社の水準を参考にしながら、渡航先・役職別に金額を設定するのが適切です。
出典:財務省|民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート 報告書
建設業など業種別の相場
業種によっても、出張手当の相場には違いがあります。建設業や製造業など出張頻度が高い業種では、1回あたりの手当を抑えめに設定するケースが多い傾向があります。一方、コンサルティング業や営業職中心の業種では、高めに設定してモチベーションを維持しようとする傾向が見られます。
金額を決める際は、税務上「同業種・同規模の企業と比較して妥当な金額であること」が非課税扱いの条件のひとつとなっています。自社の金額を設定する際は、業種や規模が近い他社の相場を参考にしましょう。
出張手当(日当)の勘定科目

出張手当(日当)の勘定科目は「旅費交通費」です。実費精算ではなく定額で支給されるものですが、出張に伴って発生する費用として旅費交通費に分類されます。
税務上の区分は下記のとおりです。
- 所得税:出張旅費規程に基づき、通常必要と認められる範囲内であれば非課税
- 法人税:全額損金として算入でき、節税につながる
- 消費税:国内出張の日当は課税仕入れの対象となり、仕入税額控除が適用できる。海外出張の日当は原則として課税仕入れの対象外として処理される
なお、非課税扱いにするには出張旅費規程の整備が必須です。規程がない場合は「給与」とみなされ、課税対象となります。
仕訳例:従業員に日当2,000円を現金で支給した場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 旅費交通費 | 2,000円 | 現金 | 2,000円 |
出張経費の勘定科目

出張経費は費用の内容によって勘定科目が異なります。「実費」と「会食」に分けて整理しましょう。
実費精算時の勘定科目
交通費・宿泊費など実際にかかった費用は「旅費交通費」として処理します。新幹線・飛行機・タクシー代、ホテル代などが該当します。領収書をもとに実費精算するのが原則です。
仕訳例:出張の宿泊費30,000円を現金で支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 旅費交通費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
会食時の勘定科目
出張中に取引先との会食や接待が発生した場合は「交際費」として処理します。出張手当(日当)の範囲には含まれないため、領収書をもとに別途実費精算が必要です。
ただし、取引先との飲食費が1人あたり1万円以下の場合、下記の要件をすべて満たせば「会議費」として処理できます(2024年4月改正)。
- 得意先など社外の事業関係者との飲食であること
- 1人あたりの費用が1万円以下であること
- 飲食日・参加者の氏名や名称・参加人数・金額と店舗名などを記録した書類を保存すること
交際費は法人税上の損金算入に上限がある一方、会議費は全額損金算入できます。要件を正しく確認したうえで使い分けましょう。
仕訳例1:取引先との会食費30,000円を現金で支払った場合(1人あたり1万円超は、交際費)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 交際費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
仕訳例2:取引先との打ち合わせ時の飲食費8,000円を現金で支払った場合(要件を満たせば、会議費)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 会議費 | 8,000円 | 現金 | 8,000円 |
出張手当(日当)のメリット・デメリット

出張手当(日当)の支給は、会社・従業員の双方にメリットがあります。一方で、導入・運用にあたってはデメリットも存在します。
それぞれ確認しておきましょう。
メリット1:会社・従業員ともに税負担を抑えられる
出張旅費規程に基づいて支給される出張手当(日当)は、原則非課税です。
会社側は法人税・消費税の節税につながり、従業員側は所得税・住民税・社会保険料の算定対象にならないため、手取りが実質的に増えます。給与として同額を支給する場合と比べて、双方にとって税負担を抑えられるのが最大のメリットです。
メリット2:経費精算の手間を削減できる
出張手当(日当)は定額支給のため、領収書をもとに細かく実費精算する必要がありません。
従業員は出張中の食費や雑費の領収書を管理する手間が省け、経理担当者も件数分の確認・処理が不要になります。出張頻度が高い企業ほど、業務効率化の効果が大きくなります。
メリット3:従業員の出張へのモチベーションが上がる
出張は移動時間が長く、慣れない環境での業務となるため、従業員の心身への負担が大きくなりがちです。
出張手当(日当)の支給は、その負担への会社からの配慮として機能します。手当があることで従業員の満足度や帰属意識の向上につながり、出張に対するモチベーションを維持しやすくなります。
デメリット1:会社の支出が増加する
出張手当(日当)を支給すると、交通費・宿泊費の実費精算に加えて定額の手当が発生するため、出張1件あたりの支出総額が増えます。
出張頻度が高い業種ほど累積額が大きくなるため、導入前に支出規模を試算したうえで金額設定を検討することが重要です。
デメリット2:出張旅費規程の整備に手間がかかる
出張手当(日当)を非課税扱いにするには、出張旅費規程の整備が必須です。
規程の策定には、役職・出張先・宿泊の有無などの条件を整理する必要があり、社内調整や専門家への相談が必要になる場合もあります。導入前のコストと時間を見込んでおきましょう。
デメリット3:不正受給リスクへの対応が必要になる
出張手当(日当)は定額支給のため、支給基準が曖昧だと実態のない出張申請や過大請求といった不正受給が発生するリスクがあります。
出張報告書の提出を義務付けるなど、適切な管理体制を整えることが重要です。
出張手当(日当)の導入方法

出張手当(日当)を非課税で支給するには、出張旅費規程の整備が前提となります。以下のステップに沿って進めましょう。
ステップ1:支給目的と対象者を定める
まず「誰に」「どのような目的で」支給するかを決めます。支給対象は全従業員を一律とするか、役職や雇用形態で区分するかを検討しましょう。また「出張」の定義(例:勤務地から何km以上の移動、宿泊の有無など)もこの段階で決めておきます。あいまいなまま運用を始めると、申請時のトラブルや不正受給につながる恐れがあります。
ステップ2:出張旅費規程を策定する
支給対象が決まったら、出張旅費規程を書面にまとめます。下記の内容を盛り込むのが一般的です。
- 出張の定義(距離・日数・国内/海外の区分)
- 支給対象者と役職別の支給額
- 交通費・宿泊費の上限額
- 日当の計算方法(日帰り・宿泊別など)
- 精算方法と出張報告書の提出ルール
規程は就業規則の一部として定めるか、独立した規程として作成します。取締役会や株主総会での承認を経て議事録に残しておくと、税務調査の際の証拠として役立ちます。
ステップ3:申請・承認フローを整備する
規程が完成したら、出張申請から支給までの流れを整備します。出張前の申請、上長の承認、帰社後の出張報告書の提出、経理による支給処理という流れを明確にし、全従業員に周知します。フローが整っていないと、経理の手間が増えるだけでなく、不正申請が起きやすくなります。
ステップ4:運用開始・定期見直し
運用を始めたら、実態に合っているかを定期的に確認します。支給額が物価や同業他社の相場からずれてきた場合は、年に1回程度を目安に見直しましょう。規程と実態がかけ離れたまま運用を続けると、税務調査で指摘を受けるリスクがあります。
まとめ|出張手当(日当)を正しく理解して適切に運用しよう
出張手当(日当)は、出張中の食費や通信費など細かい出費を補填する目的で支給される手当です。法律上の義務ではありませんが、会社・従業員の双方に税負担の軽減や経費精算の効率化といったメリットがあります。
支給額の相場は役職や出張の種類によって異なります。非課税扱いにするには出張旅費規程の整備が必須で、役員・従業員間でバランスが取れており、かつ同業他社と比べて妥当な金額であることが条件です。勘定科目は原則「旅費交通費」で処理し、取引先との会食など目的によって「交際費」や「会議費」を使い分けます。
導入の際は、支給目的と対象者の定義から始め、出張旅費規程の策定、申請フローの整備と順を追って進めることが大切です。運用開始後も定期的に内容を見直し、規程と実態が一致した状態を保ちましょう。
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